他の農産物と同様に、ただ木を畑に植えただけではおいしい梨は実りません。一年中様々な作業を通して一つ一つの実を丁寧に大切に育てていくことで初めて皆様においしい梨を届けることができます。以下に年間を通した梨作りの大まかな作業を紹介します。
収穫が終わり冬を迎えると、梨の葉っぱは落葉します。その後、次の年も梨がおいしく実るようにと畑全体に肥料を撒いていきます。また、病気によって元気が悪くなった樹などを抜いて新しい苗木に植え替える改植作業もこの時期に行います。
不要な枝を切り、樹の形を整えます。また、梨畑には梨棚といって人の背の高さに合わせて針金が張り巡らされており、必要な枝は梨棚へ曲げて紐で縛り、誘引します。そうして人間の背の高さに合わせて枝を配置することで作業がしやすくなり、さらに枝が水平に広がるので樹全体に太陽の光を浴びせることができます。また、梨の収穫期は台風が上陸することが多いため、針金に固定することで風の被害を抑える効果もあります。
梨は自分と同じ品種の花粉では受粉しません。例えば、幸水は幸水の花粉では受粉せず、実がなることはありません(※)。そのため、別の品種の花を大量に集めて雄しべから花粉を取り出し、その花粉を絵筆や交配専用の機械を使って梨の花一つ一つに花粉をつけていきます。それを人工交配と言います。虫や風によって受粉する自然交配もありますが、安定した量が結実するわけではないので、確実に実をならせるために人の手で交配していくことが必要なのです。
※実際には違う品種同士でも受粉できない品種の組み合わせがあります。ここでは詳細を省きますが各品種ごとに持つS遺伝子という遺伝子の型が同じ組み合わせ同士では交配ができなくなります。これは近親交配を回避するための木の性質です。
受粉した花はやがて梨の実をならせます。しかし、その中には形が悪かったり病気に感染したりと、売り物にならないものもたくさんあります。そのような梨をまだ実が小さいうちに間引き、いくつも実った中から形が良くおいしくなる素質をもった梨だけを残します。そうして残された梨に養分が集中して、大きく甘くおいしく育っていきます。
品種によっては一つ一つの実に袋を被せることも必要です。特に二十世紀やかおりといった青梨は外観をきれいにするためにも、小袋と大袋の2回に分けて袋掛けをする必要があります。それ以外にも新高などの晩生の梨は早生系の品種に比べて樹の上にある期間が長く、虫・鳥・病気などのリスクが高くなるので、そういった被害を防ぐためにも大袋をかけて栽培しています。
村越新四郎梨園 〒272-0822 千葉県市川市宮久保4-13-26 TEL/FAX047-371-6650(8月上旬~10月末;14:00~19:00頃)